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経営と人生のポートフォリオ:60代リーダーが実践する「戦略的オフ」のススメ

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ビジネスの最前線で激動の時代を生き抜き、今なお会社経営の指揮を執る60代のリーダー諸氏にとって、「ワークライフバランス(仕事と生活の調和)」という言葉は、どこか他人事のように聞こえるかもしれない。

「仕事こそが最高の趣味であり、生きがいだ。プライベートと切り離す必要などない」――。そう考えるのは、極めて自然なことだ。現に、自宅に仕事を持ち込んで深夜までタスクをこなしていても、大いなる充実感の中にいれば「疲れた」という自覚症状など湧かないものだろう。

しかし、人間の肉体は精神ほど頑強ではない。本人が「まだやれる」と思っていても、血圧の数値や長引く肩こり、睡眠の質の低下といった形で、体は静かに、しかし確実にサイン(不調)を発し始める。人生100年時代と言われる現代において、60代の経営者が心身を損なうことは、企業にとって最大の「経営リスク」である。私たちが今、真に取り組むべきは、仕事をセーブすることではなく、持続可能な経営のために「オフの時間」を戦略的にマネジメントすることだ。

■ 「自覚なき疲労」という最大の経営リスク

長年、組織のトップとして第一線を走ってきた人物の脳は、常に高リターンの「攻めの姿勢」でフル回転している。アドレナリンが出続けている状態では、脳が疲労を麻痺させてしまうため、本人は「絶好調」だと錯覚しやすい。

「メンテナンスを怠った優秀なエンジンほど、突然停止するリスクが高い」

これは機械だけでなく、経営者の身体にもそのまま当てはまる。特にマーケティングや経営判断といった高度な脳内リソースを消費する職責において、体調の微細な崩れは、決断のスピードや精度の鈍化に直結する。

仕事一辺倒の生活は、知らず知らずのうちに視野を狭め、自社を取り巻く市場や若手社員のリアルな価値観に対する解像度を下げてしまう危険性もある。経営者が健康を維持し、クリアな思考を保つことは、優れたコーポレート・ガバナンス(企業統治)そのものなのだ。

■ 「釣り」に学ぶ、経営と引き算の美学

仕事中毒の経営者に「ただ休め」と言っても、かえってストレスが溜まるだけだろう。そこで注目したいのが、趣味である「釣り」の時間だ。

釣りに出かけているとき、貴方は何を考えているだろうか。潮の目を読み、魚との知恵比べに没頭しているその瞬間、会社の数字や未処理のメールは一時的に脳内から締め出されているはずだ。これこそが、現代のビジネス界で注目されている「マインドフルネス(今ここに集中すること)」の究極の形である。

釣りにおける「静かにアタリを待つ時間」は、一見すると何も生産していないように見える。しかし、その「引き算の時間」があるからこそ、いざ魚が仕掛けに食いついた瞬間に、最高のパフォーマンスで竿を合わせることができる。

経営も全く同じだ。24時間30日、常に戦闘モードでいることは、仕掛けのない海に闇雲に網を投げ続けるようなものだ。あえて「仕事を完全に遮断する時間」を作ることは、次のビッグビジネス(大物)を釣り上げるための、極めて戦略的な「仕込み」の時間なのである。

■ 人生というプロダクトの「ライフサイクル」を再定義する

マーケティングにおいて、製品にプロダクトライフサイクルがあるように、人間のキャリアにもステージがある。60代は衰退期ではない。これまでに蓄積したアセット(資産)を最大化しつつ、次世代へ組織を繋ぐ「リ・インベンション(再発明)の時期」である。

経営者が自宅にまで仕事を詰め込み、現場の隅々にまで目を光らせ続けることは、一見すると責任感の表れに見える。しかし見方を変えれば、それは若手や後継者層から「失敗し、学ぶチャンス」を奪うボトルネックになっている可能性もある。

貴方が休日に釣竿を握り、海を眺めているその時間、会社では部下たちが自発的に考え、トラブルを乗り越える絶好の訓練が行われている。経営者が「あえて現場を離れる」ことは、組織の自走力を育てるための最高の人材育成戦略なのだ。

■ 結び:今日から始める「エネルギーマネジメント」

ワークライフバランスとは、若者が定時で帰るための甘えの仕組みではない。百戦錬磨の経営者が、その貴重な知見をさらに社会や企業に還元し続けるための「持続可能なエネルギーマネジメント」である。

体が発している小さなサインを無視してはならない。それらは、次の持続可能な成長に向けた「戦略見直しのプロンプト(警告)」だ。

まずは次の週末、スマートフォンの電源を切り、海の上の心地よい風と波の音だけに身を委ねてみてはいかがだろうか。オフィスに戻ったとき、貴方の脳はかつてないほど冴え渡り、次なる市場を切り拓く新たなインサイト(洞察)が、必ずや湧き上がってくるはずだ。

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